当院は近視進行抑制治療に長年取り組んでまいりました。
2025年4月近視進行抑制点眼薬リジュセアミニが発売されたことから近視進行抑制により一層取り組むことにいたしました。
通常の外来でもご相談や治療をお受けいただけますが、
予約をご希望の場合は、月曜日午後、お取りいただけます。
ご予約の上ご受診ください。
予約電話番号:03-5945-8765
近年近視になる子供たちの割合が急増していること、低年齢化が問題になっています。その原因としては外で遊ばないことや、見る距離が短いタブレット・スマホなどのデジタルデバイスを長時間見ることが考えられます。外で遊ぶ時間が長いほど近視の進行は軽度です。外遊びをできるだけしましょう。デジタルデバイスを使う時間が長いお子さんほど、近視が進行しています。お子さんのデジタルデバイス使用時間は幼児1日1時間、学童期2時間以内にとどめたほうがいいでしょう。
小児の近視進行を見る方法として、眼軸長(眼の奥行の長さ)を計測することが大切です。近視が進むとき、眼軸が伸びます。6歳から12歳(特に6歳から9歳まで)で伸びることが多く、注意が必要です。また6歳以下の幼児期に、すでに近視が見られる場合、進行が予想されますので、積極的な治療を受けていただきたいです。一度伸びてしまった眼軸長はもとにもどりません。

点線が屈折変化、実践が眼軸長変化を示している、いずれも15歳頃(中学生)までは進行速度が速いが、それ以降(高校生)は安定化していくことが確認できる。
学童の近視抑制より引用

小学生:23.41±1.05ミリ
中学生:24.71±1.21ミリ
慶応大学眼科データより
近視進行抑制治療の目標
正視眼でも一年に0.1mmの伸びは認められます。近視進行抑制治療の目標は
平均的な眼軸長(慶応大学眼科2019年報告)
- 7歳から9歳まで 0.3mm以内
- 9歳以上 0.2mm以内
- 18歳ころ 0.1mm以内
東邦大学松村沙衣子先生の報告より
強度近視のかたは将来的に目の疾患(緑内障・網膜剥離・近視性黄斑症など)になる頻度が上がりますので、強度近視にならないようにすることが大切です。
幼児から近視の方、ご両親に近視(遺伝的に疑われる方)は進行することが多く、要注意です。
測定データはソフトウェアで管理

当院が提案する近視進行抑制治療(保険適応外診療)
各方法についての詳細は当院のホームページ、近視抑制治療オルソケラトロジーをご覧ください。
- 低濃度アトロピン治療 リジュセアミニ(1日1回夜点眼します)
- オルソケラトロジー(ナイトレンズ)
予約制 ☎070-3314-5963
※低濃度アトロピン療法との併用が効果的です。 - 多焦点コンタクトレンズ
- 特殊眼鏡 DIMSレンズなど
眼鏡ですのでオルソケラトロジーや多焦点コンタクトができない小さなお子さんでも使用可能です。
海外では使用されていますが、日本ではまだ認可されていません。処方が可能になるのを待っています。 - レッドライト療法
有効性が高いというデータがでていますが、当院ではまだ導入しておりません。ご希望の方はご紹介いたします。
1:低濃度アトロピン療法(リジュセアミニ点眼)
保険適用外診療
アトロピンは毛様体筋弛緩作用があり、近視の進行抑制に効果があるというデータが蓄積されています。低濃度にすることで副作用を抑えています。リジュセアミニは厚生労働省から認可を受けた国内初の目薬です。
- 近視進行抑制効果の高い0.025%アトロピン
- 1回使いきりタイプ。防腐剤が入らないため安全性が高い
- 副作用 最も多い副作用は羞明(まぶしさ) 9%のお子さんがまぶしさを訴えました
有効性
2年間の比較試験(200例)で約38%の抑制効果を認めました。

使用方法
- 毎日夜寝る前に1回1滴ずつ点眼します。
- 点眼を開始してから1か月後に副作用がでていないか診察します。
- その後は4か月に一度検査に来院していただきます。
低濃度アトロピン治療(リジュセアミニ)の費用
近視進行抑制治療は予防であることから、保険適応外診療(自費扱い)となります。
リジュセアミニの治療を始められましたら、点眼処方の有無に関わらず、自費扱いとなりますのでご了承ください。
| 診療内容 | 費用 |
|---|---|
| 視力・屈折・眼軸長測定検査・診察(原則毎回) | 3,000円 |
| 眼鏡・コンタクトレンズ処方(希望者のみ) | 1,000円 |
眼鏡・コンタクトレンズ処方を希望される場合、検査日以外の処方箋発行は翌日~2週間以内とさせていただきます。
2週間を過ぎますと再検査が必要となります。
| 診療内容 | 費用 |
|---|---|
| リジュセアミニ 1か月分 | 3,800円~(税込み) |
リジュセアミニは4か月分まで処方可能です。指示書を薬局に提出し、購入していただきます。
4か月に一度、受診をしていただきます。
ご注意
点眼薬のみの処方はお断りしております。他の疾患の治療や薬の処方を希望される場合、同日はすべて自費扱いとなり、保険診療を希望される方は別日に受診していただきます。
今までアトロピン治療をされていた方も自費診療になるため再度同意書に記入していただきます。
初診時の流れ
低濃度アトロピン治療よくある質問
保険適応外診療なのはなぜですか?
近視進行抑制治療は病気ではなく、予防のため適応外になります。
リジュセアミニの近視進行抑制効果はどのくらいですか?
5~15歳を対象とした300例、3年間の研究結果から眼軸長は平均の38%の抑制効果がみられました。
視力は回復しますか?
近視の進行を抑制する効果は報告されていますが、すでにある近視を減らしたり、視力を回復させることはできません。
治療しても効果がないこともありますか?
残念ながら点眼していても進行が見られる方もいらっしゃいます。しかし治療を受けた方と受けていない方を比べると進行の度合いに差があることは証明されています。
いつまで近視治療をすればいいのですか?
眼軸が伸びている間は続けた方がいいでしょう。近視の程度や眼軸の伸びを見ながら、親御さんと相談しながら決めていきます。背が伸びている間は進むことが多いため、男の子の場合18歳、女の子の場合15歳くらいまで続けることをお勧めしています。
近視治療をやめると、近視が進むことがありますか?
治療を中止した後にリバウンドが起こった症例があります。
副作用はありますか?
多い副作用は羞明(まぶしさ)、ぼやける、などです。就寝前に点眼することで、普段の生活に支障がでる方は少ないです。症状が強い場合は使用の中止をお願いします。
全身に対する影響はありませんか?
現在のところ、全身的な副作用は報告されていません。
オルソケラトロジーや多焦点ソフトコンタクトレンズとの併用はできますか?
併用することで、さらに抑制効果があると報告されています。
2:オルソケラトロジー(自費診療)

オルソケラトロジーは夜寝る時にレンズを装用して、角膜の形を変化させ、外した後も裸眼視力を良好に保つ方法です。近視の矯正ができるだけではなく、眼軸長が伸びるのを抑制する効果も認められます。夜間に大人の管理のもとで装用できるので、比較的小さいお子さんにも使用できます。
近視が強い方の場合、強く圧迫しないと視力が出ないのでお勧めできません。-4.00D以下の軽度の近視の方が適応になります。
オルソケラトロジーレンズの仕組み

オルソケラトロジーの長所
- 比較的小さいお子さんでも使うことができます。
- 昼間裸眼で過ごせるのでスポーツする方にも向いています。
オルソケラトロジーの欠点
- ハードコンタクトなので慣れないうちは痛いです。
- 自費診療で高価です。
- 強い近視や乱視の方は視力が出ません。
- 見え方に日内変動(朝は見やすく、夜は見にくい)があります。
- 洗浄をしっかりしないと、角膜感染症・アレルギー性結膜炎になる可能性があります。
オルソケラトロジーの有効性

当院使用のオルソケラトロジーレンズ

デザイン

ブレスオーコレクト®は4つのカーブからなる特殊な内面形状で構成されています。
レンズ中央部は周辺部よりフラットなデザインが施された特殊な構造を持ち、就寝時にレンズを装用することで角膜前面を扁平化させて、脱着後の裸眼視力を改善させることができます。
オルソケラトロジーレンズによる疾患

- アレルギー性結膜炎
酸素透過率の高いレンズなので、汚れが付きやすいです。汚れてしまったまま使用しているとアレルギーが起きやすいです。特にレンズの内面の汚れには注意が必要です。
汚れの中には細菌が付着しますので、レンズのこすり洗いやケースの交換が必要となります。 - 角膜障害
オルソレンズは非常に酸素透過率の高い素材でできています。
角膜中央に圧力をかけながら夜眠るため、角膜の傷、細菌感染による角膜潰瘍なども起こる可能性があります。
オルソケラトロジー 近視のメカニズム
近視の眼に対して、メガネや普通のコンタクトレンズで矯正を行うと、レンズの周辺から入ってくる光は網膜より遠くにピントが合います(遠視性 defocus)。このため、像がぼやけ、その刺激によって眼軸長が伸びやすくなり近視が進行しやすくなると言われています。
一方、オルソケラトロジー治療の場合、周辺の光は網膜より少し手前にピントが合います。このため像のぼやけが少なく、眼軸長を伸ばす刺激が少ないため、近視の進行が抑えられるのではと考えられています。

初回にかかる費用(税込み)
| 適応検査・トライアル装用 | 5,000円 |
|---|
30,000円(預り金)
オルソ契約にかかる費用
| 専用レンズ+検査代 | 140,000円(両眼) 85,000円(片眼) |
|---|
※レンズ受け取り時、預り金を差し引いてお支払いください
その他の費用
| 1年以内であればレンズ1枚につき2回まで | 交換無料 |
|---|---|
| レンズ紛失 | 35,000円/1枚 |
1年以降にかかる費用
| 定期検診代 | 4,000円 |
|---|
※破損しにくいレンズですが約3年くらいで作り替えをお勧めしています。
半年に一度くらいの検診をお勧めします。
定期健診
レンズ処方から
- 3ヶ月後
- 6ヶ月後
- 11ヶ月後
- 1年以降3~6か月毎
※1年を過ぎますとレンズが合わなくても交換できなくなります。その前に受診してください。
オルソケラトロジーよくある質問
効果について
オルソケラトロジーはどんな人にむいていますか?
角膜が比較的やわらかい、若い方に向いています。 またスポーツで身体を激しく動かしたり、 仕事柄メガネやコンタクトが日中使えない方に向いています。
年齢制限はありますか?
6歳位から対象とし年齢制限はありません。
効果があるのは近視だけですか?
オルソケラトロジーによる矯正効果の中心は近視ですが、乱視が軽度の場合も乱視矯正可能です。強い乱視の場合視力が出にくいので不適応となります。
効果はどのくらいであらわれますか?
個人差はありますが、裸眼0.3くらいの子供ならば、テスト装着中に1.0くらいまで見えることもあります。効果的に安定した視力を持続するには、約1週間の装着が必要です。
レンズをはずしたあと、どのくらい効果が持続しますか?
個人差はありますが、一回目の装着で翌日の昼くらいまで持続します。装着時間が長くなれば、持続時間もしだいに延長します。
装着時間は長い方がいいのですか?
一日6時間ほど装着すれば効果が現れます。睡眠時間が短い方は、安定した効果が得られるまでに時間がかかることがあります。
見え方に問題はないのですか?
明るい所ではくっきり見えますが、暗い所では電燈や信号がぼやけて見えることがあり、視力の出方には変動があります。車の運転が多い方にはお勧めできません。
途中でやめるとどうなりますか?
一般的には約2週間で角膜の状態は元通りになり、他の矯正方法へ変更できます。
装用について
痛みはないのでしょうか?
この治療では特殊なハードコンタクトレンズを利用するため、初日はごろごろし、異物感を感じるかもしれません。2日目、3日目と角膜が矯正されるにつれ、この異物感は薄れていきます。この異物感で子供たちが治療をやめてしまうことはほとんどありません。正しく装着すれば翌朝には矯正効果が現れるので、見えるという喜びの方が強く、異物感が気にならないようです。
装用中に違和感を感じたら?
レンズと角膜の間に空気が入った時に、違和感を感じることが多いようです。この場合、眼に問題はありませんが、矯正効果が下がることがありますので、必ずレンズを外して、もう一度装着し直してください。それでも違和感がある場合は、装用を中止して受診してください。
レンズは左右同じですか?
眼の状態が同じであれば、左右は同じレンズになります。違う場合はそれぞれ異なるレンズになります。レンズにはデータが刻印されていますので、左右の確認は簡単です。
日中に装用してもいいですか?
基本的には夜間装着してください。
日中に装用するとトラブルが生じることがありますので、お勧めできません。
レンズの寿命は?
レンズの寿命は通常の高酸素透過性レンズと同じくらいです。3年程度で交換する必要があります。
ドライアイでも使えるでしょうか?
夜寝ているときに装着するので、医師の管理下のもと、比較的眼の乾きやすい方でもお使いいただけます。強度のドライアイの方にはお勧めできません。
オルソケラトロジー治療を受けて合併症が起きる可能性はありますか?
使い方を守らなかったり、レンズケアを怠ると、通常のコンタクトレンズと同等のトラブルが起こることがあります。問題が生じたら、無理に装用せず受診してください。
いろいろなケア用品が売られてますが、どれを使っても大丈夫ですか?
オルソレンズは特殊なレンズなので、指定の物を使ってください。
アレルギーがあるのですがオルソレンズは使えますか?
強度のアレルギーがある場合は悪化することがありますので入れない方がよいです。
3:多焦点コンタクトレンズ
近視進行抑制には多焦点ソフトコンタクトレンズを用いる方法もあります。遠近両用コンタクトとして多数の多焦点コンタクトレンズが販売されています。小児に用いることで近視の進行が抑制されたとの結果が多数報告されています。オーストラリアのブライアンホールデン視覚研究所(BHVI)で開発されたレンズでは、単焦点ソフトコンタクトレンズと比較して2年間で32%(屈折値)、25%(眼軸長)の近視抑制効果が認められています。実際に海外では「MYLO®」という近視進行予防を目的として認可されたコンタクトレンズとして発売されています。このレンズは日本では未認可のため販売されておりません。
しかし、同じ光学デザインの製品「SEED 1Day Pure EDOF(MID)」が遠近両用レンズとして日本で販売されています。素材は異なりますが、同じレンズデザインのため、同様の近視進行抑制効果が期待されます。
お勧め
- レンズを装着したときの、痛みが強くてオルソケラトロジーができない方
- 近視が強いためにオルソケラトロジーができない方
ご注意
日中装用するコンタクトレンズなので、取り扱いに不安のあるお子さんにはお勧めしていません。
乱視が強い方には適応レンズがありません。


費用
- 当院ではシード1Day Pure EDOF(MID)を処方しています。
- 1か月のレンズ代 約8,000円
- 処方箋のみの発行は致しておりません。
多焦点ソフトコンタクトレンズの近視抑制のメカニズム
眼の中での光の焦点の結ばれ方が、眼球の形成に影響を与えます。多焦点ソフトコンタクトレンズはレンズ中央部分で、網膜中心に光の焦点が合いますが、レンズの周辺部分に向かって加入度数を増して、網膜の手前でピントが合うように設計されています。周辺部の網膜の焦点ボケを軽減することで眼軸が伸びるのを抑え、近視進行が抑制されると考えられています。
現在当院で使用しているレンズはシード1Day Pure EDOF(MID)
遠方・中間・近方度数が複雑に組み合わされた光学デザインになっています。

多焦点コンタクトレンズよくあるご質問
オルソケラトロジーと多焦点コンタクトレンズどちらがいいですか?
痛がりの方には痛くない多焦点コンタクトレンズが向いています。
スポーツをする方の場合、多焦点コンタクトレンズも使用可能ですが、昼間裸眼で過ごせるという点でオルソケラトロジーの方がいいと思います。
低年齢の方は昼間コンタクトレンズを入れて過ごすのには不安がありますので、親御さんの管理ができるオルソケラトロジー方がいいと思います。
普通のコンタクトレンズと多焦点コンタクトレンズ、どちらがいいのでしょうか?
近視が進行する可能性の高い年齢の方は抑制効果が期待される多焦点コンタクトレンズの方がいいと考えます。
低濃度アトロピン療法との併用ができますか?
低濃度アトロピンと併用が有効という結果が出ていますので、併用されることをお勧めします。
小学生ですが、多焦点コンタクトレンズを使っても大丈夫でしょうか?
レンズがずれた時や痛くなった時の対処が自分でできる年齢になるまではお勧めできません。